筋膜をオレンジに例えてみましょう。オレンジの一番外の皮を剥くと、まず初めに分厚くて白く柔らかい、中果皮が皮の内側にくっついているのが見えるでしょう。これは私たちの皮膚がその下の浅筋膜としっかり付着しているのに似ています。この白い部分をさらに剥いていくと、その奥には深筋膜—丸いオレンジの形を保っている、深部の筋膜の中でも一番外にある「筋外膜」に達するでしょう。
筋外膜:これはケースのような役割をしている筋膜で、筋外膜が幾つもの束を一緒に束ねて筋肉の形を醸し出しているのです。この層では、腱が筋外膜を近くの組織につなげています。構造的には筋外膜は深筋膜と考えられます。オレンジでいうと、一つ一つの片に分けられ、甘くて美味しい果肉が現れる前の、一番深い部分にあって剥きにくい膜を指します。
筋周膜:筋肉細胞の束を囲む筋膜で、この層では繊維束と呼ばれます。これは筋紡錘、感覚ニューロン(受容固有感覚器)の存在する場所でもあります。オレンジの一片を囲む膜を想像してみてください。この膜には形がありますが、切り開くと何百ものはっきりした形のない膜に包まれた果肉から ジュースがあふれ出すでしょう。
筋内膜:これはそれぞれの筋肉細胞に被さる筋膜のことです。オレンジの一番小さな一片を囲む薄くてしっかりした膜で、これを破るとジュースが吹き出すでしょう。
筋外膜、筋周膜、筋内膜はお互いに結びついています。そして絡み合いながら、筋筋膜の組織全体に形をもたらしているのです。筋筋膜と隣の構造を結びつけている腱は、筋肉プロテインを含まずたくさんの筋膜が織り混ざり合ったものです。この「鞘」が骨の周りの構造〜筋筋膜、腱、靭帯、筋周膜などと繋がるのです。
体の内側はこのように全て繋がっているため、数週間続いた肩の痛みが消えたと思ったら、急に腰が痛くなってきたりーといった不思議なことがあり得るのです。筋膜は身体中を縫い合わせている縫合システムであり、そのために一箇所を緩めることが全身に影響を与えるのです。身体は全て繋がっているからです。
オレンジのたとえがとてもわかりやすく、理解を助けてくれました。 筋肉細胞を守り、束ね、繋がりあい、絡み合う筋膜が体全体に存在するとなると、人間1人分の筋膜の総量とはどのくらいになるのか、興味がわきました。 また、体の内側が全て繋がっていると理解すると、偏った体の使い方に早く気づくこと、そしていち早く使い方を修正し、良くない連鎖に陥らないようにケアをすることの重要性を感じました。