スマホやタブレットがないと生きていけない現代人。一日中パソコンの前で仕事をしたあとに通勤電車の中ではゲーム、SNSに明け暮れ、もう寝ている時間意外はず〜っとネットに繋がった状態―友人や家族と食事をしていても、全員がスマホに釘付けで対話もなし。本当になんという悲しい世の中になってしまったのでしょう。若い方でも姿勢が極端に悪く、骨が脆くなってしまっているのがわかります。
きょうは僧帽筋のお話をしましょう。僧帽筋は体の一番表面にある大きな筋肉で、首と背中全体を覆う台形のような形をしています。首の上の後頭部から始まり(起始部)、第七〜第十二胸椎まで続きますが、鎖骨の外側、肩峰、肩甲棘で停止(停止部)しています。ちなみに筋肉が運動しても動かない方の端を起始(きし)、筋肉が運動する時に動く方の端を停止(ていし)という呼び方をします。言葉の説明ではきっとピンとこないと思うので、下の図を見てください。この上背を覆う大きなパワフルな筋肉がイメージできましたか?
この図で3色に色分けしてある通り、僧帽筋は上方、中間、下方の3つの部分に分かれ、位置によって役割が違います。
僧帽筋上方
・肩甲骨の上方回旋(腕を頭上に上げる)
・肩甲骨の内転(肩甲骨を内に引き寄せ、肩を後ろに引く)
・肩甲骨の拳上(肩甲骨を上に持ち上げる)
・頸部の伸展(首を伸ばして上を向く)
・頸部の回旋(首を回す)
僧帽筋中間
・肩甲骨の内転(肩甲骨を内に引き寄せる)
僧帽筋下方
・肩甲骨の上方回旋(腕を頭上に上げる)
・肩甲骨の内転(肩甲骨を内に引き寄せ、肩を後ろに引く)
・肩甲骨の下制(肩甲骨を下に下げる)
肩甲骨の動きを司る僧帽筋は、肩こりの原因であり、滞ったままリリースしないでいるとどんどん前かがみな姿勢となり、若い方でも老人のような姿勢になってしまうのです。座ったまま同じ姿勢でパソコンやスマホに向かう、電話を耳と肩の間に挟んで長時間通話する、高すぎるか首を正しくサポートできない枕を使って寝ている、また特定の動きを繰り返して行うスポーツ(テニス、バレーボール、ゴルフなど腕を繰り返して持ち上げる動き)や作業(棚卸しなど、腕を上に持ち上げた位置で繰り返す動き)も滞りの原因となります。
広大な僧帽筋は位置によって役割は違うとはいえ、一つの大きな筋肉と筋膜の組織(筋筋膜)を型作っていることは間違いありません。忘れてはいけないのは筋肉は組織を通じて全身つながっており、また筋膜を通して他の筋肉組織とも繋がりあっている、ということです。ーつまり、僧帽筋の上方をマッサージすることは肩や首だけでなく体全体をリリース、呼吸と姿勢を向上し、神経系までリラックスさせることにつながるのです。つまり筋膜リリースは私たちの心身の健康にも密接に関係している、と言えるでしょう。
そのような筋肉と筋膜の特性を理解していきましょう。次のブログでは蓄積した僧帽筋上方の滞りを根こそぎにするリリース方法をご紹介していきます。
YTUボールに出会う以前、首コリがひどくマッサージを受けに行ったら、セラピストに「先に肩甲骨まわりをほぐすと、首がほぐれやすくなるんですよ」と説明されました。その時は「大きい筋肉からアプローチする方が効果的なのかな?」くらいに思っていましたが、僧帽筋の形状、起始部や停止部、周囲の他筋肉との繋がりを知ることで、あの時に首がほぐれやすくなった理由がよく理解できました。筋肉は組織を通じて全身つながっている―自分の身体の状態を上手に見立てて効果的な解決策を見出していけるよう、筋肉についてしっかり学んでいこうと思います。
腕を上下する動きや肩を回す動きで肩甲骨が動く、という意識はありましたが、昨日の講義でもやったように肩甲骨自体をしっかり動かすというのは意識してしないとやらないし、いざやろうとしても肩甲骨を動かす、というのは難しく、日々練習が必要だと思いました。そしてやはりここでも、筋膜同士がつながっていること、全てはつながっているので、肩甲骨を動かす動きが神経系をリラックスする、ということが、以前よりも説得力を持って自分の中に落とし込めてきているのが実感でき嬉しく思いました。パソコンやスマホを使う時間がどんどん増えているのに、そのケアをする時間はゼロだったり、それに比例して増えていないというのは、みんなにとって大きな問題かと思います。効果的なケア方法を自分でも学び、実践してみなさんに伝えていきたいと思います。